留学先の市場規模を調べるときは、「留学生が何人いるか」に加えて、何を数えた数字なのかを確認する必要があります。大学などの在籍者、語学課程を含む登録件数、新たに学び始めた学生、学生ビザ・就学許可の保有者では、同じ国でも数字が変わります。
この記事では、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピンを対象に、受入側の公表資料から確認できた推移を整理します。対象は世界各地から来た留学生の全体で、日本人だけの人数ではありません。各国の独自統計は国別に読み、共通の教育段階で見るOECDの統計を後半に分けています。
データ確認日:2026年10月9日。最新の対象年は国・系列により異なります。
まず区別したい「人数」「登録件数」「許可保有者」
| 指標 | 数えているもの | 読み方の注意 |
|---|---|---|
| 在籍・学習者数 | 一定期間や基準日に学んでいる学生 | 語学学校や初等・中等教育を含むかは資料によって異なる |
| 登録件数(enrolments) | 学生が登録した課程・プログラムなど | 1人が複数課程に登録すると複数件になる統計がある |
| 新規学生数 | その期間に新たに学び始めた学生 | 課程の開始件数(commencements)や入国者数とは区別する |
| ビザ・就学許可 | 発給・承認、または基準日に有効な許可の保有者 | 新規発給、更新、年末保有者を混ぜない。全員が同時に学校へ在籍しているとは限らない |
この違いを確認せず、各国の見出しの数字だけで順位を付けると、教育市場の規模を読み違える可能性があります。以下の表は、各国の同じ系列の変化を読むためのものです。
アメリカ:総数は増加、新規登録は減少
米国では、国際教育研究所(IIE)が米国務省の支援を受けて実施する「Open Doors」が、高等教育機関の留学生動向を公表しています。政府のビザ発給統計とは別の調査です。総数には、在学中の学生に加え、OPT(専門分野に関連する実務研修)の参加者が含まれます。
| 学年度 | 留学生総数(OPTを含む) | うちOPT | 新規留学生登録 |
|---|---|---|---|
| 2023/24 | 1,126,690人 | 242,782人 | 298,705人 |
| 2024/25 | 1,177,766人 | 294,253人 | 277,118人 |
米国の公表系列の変化
単位:人。高等教育機関の留学生総数、OPT、新規留学生登録は別系列です。新規登録を総数へ足し合わせません。
出典:IIE「Open Doors 2025 Fast Facts」。2025年11月公表、2026年10月9日確認。原数値を基に当サイトで表を作成。新規登録はOPTを含まない別指標であり、総数へ足し合わせません。
2024/25学年度は総数が前年比4.5%増えた一方、新規登録は7.2%減りました。総数からOPTを差し引いた合計は、883,908人から883,513人へほぼ横ばいです(当サイト計算)。総数の増加だけから、在学中の学生や新しく留学する人も増えたと判断することはできません。高等教育を対象とするこの表から、独立した語学学校を含む米国の語学留学市場全体を読み取ることもできません。Open Doorsの公表説明
イギリス:高等教育の非英国住所学生は2年続けて減少
HESA(Jiscの一部門)のTable 28は、英国の高等教育機関で学ぶ「課程開始前の恒久住所が英国外にある学生」を集計しています。外国籍学生の人数と完全に同じ区分ではありません。
| 学年度 | 非英国恒久住所の学生 |
|---|---|
| 2022/23 | 758,865人 |
| 2023/24 | 729,850人 |
| 2024/25 | 685,565人 |
非英国恒久住所学生の推移
出典:HESA「Table 28」。2026年1月更新、2026年10月9日確認。5人単位に丸めた公表値。HESA(part of Jisc)のデータを基に当サイトで対象年を抜粋・再構成(CC BY 4.0)。
2024/25学年度は前年度から44,285人減少しました。これは英国の高等教育の動向であり、独立した語学学校の受講者や学生ビザ発給の総数を示すものではありません。英国の資格を国外で学ぶ学生を集計したTNE(越境教育)も別系列です。HESAの2024/25年公表資料
カナダ:学校の登録数と就学許可の保有者を分けて見る
公立高等教育機関の登録数
Statistics Canadaが2026年10月1日に公表した2024/25学年度のデータでは、公立カレッジの留学生登録は266,508件、公立大学は266,874件でした。公立高等教育機関の留学生登録全体は前年比6.9%減です。
| 対象:2024/25学年度 | 留学生のプログラム登録 |
|---|---|
| 公立カレッジ | 266,508件 |
| 公立大学 | 266,874件 |
単位:プログラム登録件数。2024/25学年度の機関種別比較で、重複のない実人数ではありません。
この統計は、各機関が9月30日~12月1日の間に選んだ基準日の登録状況です。1人が複数のプログラムに登録していれば複数件となり、私立校を含む全国の年間留学生実人数ではありません。
出典:Statistics Canada「Canadian postsecondary enrolments and graduates, 2024/2025」。2026年10月1日公表、2026年10月9日確認。Adapted from Statistics Canada, Canadian postsecondary enrolments and graduates, 2024/2025, October 1, 2026. 丸め・遡及改訂あり。当サイトで表を再構成。
年末に有効なstudy permitを持つ人の推移
IRCCは別途、12月31日時点で有効な就学許可(study permit)を持つ人を公表しています。
| 暦年・基準日12月31日 | 有効なstudy permit保有者 |
|---|---|
| 2019 | 637,745人 |
| 2020 | 527,145人 |
| 2021 | 616,365人 |
| 2022 | 803,580人 |
| 2023 | 1,037,165人 |
| 2024 | 996,375人 |
出典:IRCC「Temporary Residents: Study Permit Holders」、国籍別・年末保有者の原ファイルの「Total unique persons」。2026年10月9日取得。取得ファイルの最新対象年は2024年。5人単位に丸めた暫定値で、改訂される場合があります。Open Government Licence – Canadaに基づき抜粋・再構成。
年末保有者は2023年に100万人を超え、2024年は減少しています。ただし、これは許可の有効性で数えた人数です。上の学校登録数と対象範囲・時点・単位が異なるため、差し引きして「大学以外の留学生数」を求めることはできません。
オーストラリア:登録全体と英語課程では動きが異なる
豪州教育省のPRISMS統計は、学生ビザで学ぶ留学生が対象です。実人数(student numbers)と課程の登録件数(enrolments)を分けて公表しています。以下は、各年1~12月の登録件数です。
| 暦年 | 全部門の登録 | うち高等教育 | うちELICOS(英語課程) |
|---|---|---|---|
| 2019 | 952,392件 | 440,869件 | 156,459件 |
| 2020 | 879,874件 | 418,365件 | 104,722件 |
| 2021 | 715,790件 | 365,647件 | 41,841件 |
| 2022 | 742,074件 | 359,926件 | 79,357件 |
| 2023 | 968,966件 | 434,656件 | 161,396件 |
| 2024 | 1,088,612件 | 497,187件 | 144,206件 |
| 2025 | 1,058,040件 | 545,259件 | 93,219件 |
学生ビザ留学生の全部門登録推移
単位:登録件数。各年1~12月。学生ビザで学ぶ留学生が対象で、重複のない実人数ではありません。
出典:豪州教育省「December 2025 Summary infographic」、PRISMS。2026年10月9日確認。© Commonwealth of Australia、CC BY 4.0に基づき対象部門を抜粋・再構成。全部門には、この表で内訳を省略した職業教育・学校教育・Non-Awardも含まれます。
2025年は登録全体が前年を下回る一方、高等教育は増加しました。英語課程は144,206件から93,219件へ減少しています。高等教育の伸びを、そのまま語学留学の伸びとみなさないことが大切です。学生ビザ以外の訪問・ワーホリ滞在中に英語を学ぶ人は、この統計の対象外です。
確認時点の月次公表は2026年1~6月で、学習した実人数は687,810人、登録は771,270件でした。前年同期比はそれぞれ7%減、8%減です。これは半年分の途中経過なので、2025年通年の表とは分けて読む必要があります。豪州教育省の月次統計・定義
ニュージーランド:全部門の留学生登録は増加
Education New Zealand(ENZ)は、大学、学校教育、職業教育・訓練、英語学校などを含む留学生登録の動向を公表しています。
| 暦年 | 国際学生登録数(enrolments・ENZ公表値) | 掲載した値の公表日 |
|---|---|---|
| 2024 | 83,425 | 2025年7月14日 |
| 2025 | 92,580 | 2026年5月13日 |
国際学生登録数の推移
出典:ENZの2024年公表記事、2025年公表記事。2026年10月9日確認。各記事の公表値を独自の表に整理しました。
ENZは2025年について前年比11%増と説明しています。本表はENZの公表名称に従い、登録数(enrolments)として示しています。豪州の課程登録件数などとは集計方法が異なるため、同じ定義の人数として直接比較しません。高等教育だけを対象にした統計や、学生ビザの承認件数とも範囲が異なります。表の2024年値は2025年の発表時の値であり、最新版ダッシュボードにおける過去年の改訂は別途確認が必要です。部門別の数字を足して、実人数を作り直すことも避けます。
フィリピン:全国の連年在籍数は今回の確認範囲では未掲載
フィリピンについては、今回確認した一次資料から、高等教育と短期語学留学の対象を分けた全国の連年実績をそろえられませんでした。そのため、他国に合わせるための推計値や、観光目的の入国者数は掲載していません。
入管資料にはStudent Visaの9(f)と、短期・非学位課程などのSpecial Study Permit(SSP)があり、対象の違いを確認して読む必要があります。発給・更新件数を、そのまま在籍する留学生の実人数に置き換えることもできません。フィリピン入管「Citizen’s Charter 2025」
入管の2025年実績報告書は公開されていますが、本記事では数表の確認が完了していないため数値を採用していません。「未掲載」は、留学生がいないことを意味しません。
OECDで見る共通の高等教育区分
国をまたいで受入規模を見る場合は、対象の教育段階をそろえた資料が役立ちます。OECD「Education at a Glance 2026」のTable B4.3は、ISCED 5~8に当たる高等教育の国際移動学生を扱っています。短期高等教育から学士・修士・博士段階までが対象で、一般の短期語学留学やワーホリ全体の人数を示すものではありません。
| 受入国 | 過去の対象年 | 過去の受入数 | 最近の対象年 | 最近の受入数 |
|---|---|---|---|---|
| アメリカ | 2015 | 907千人 | 2024 | 1,006千人 |
| イギリス | 2015 | 431千人 | 2024 | 721千人 |
| カナダ | 2019 | 279千人 | 2023 | 481千人 |
| オーストラリア | 2015 | 293千人 | 2024 | 580千人 |
| ニュージーランド | 2015 | 57千人 | 2024 | 44千人 |
出典:OECD「Education at a Glance 2026」Table B4.3、対応データへのリンク。2026年10月9日確認。千人単位の丸めた公表値を抜粋・再構成。カナダは原表の脚注に従い、比較年を2019年と2023年としています。
この表も、すべての国の同じ年の実人数を厳密に並べたランキングではありません。年次の例外や国別の定義を保ったうえで、高等教育という共通の範囲を読むための資料です。前半の各国独自統計とは、年次や調査対象が異なるため数字が一致しない場合があります。フィリピンの同系列の値は今回未取得です。
留学市場を見るときに確認したいこと
受入数を調べる際は、次の順で確認すると数字の意味が明確になります。
- 何を数えたか。在籍者、課程登録、新規学生、ビザのどれか
- どこまでを対象にしたか。高等教育だけか、語学学校や学校教育も含むか
- いつの数字か。学年度、暦年、年末時点、年途中の累計のどれか
- 同じ系列で比較しているか。改訂や定義変更があれば注記を確認する
日本人がどこへ留学しているかを調べたい場合は、受入国全体の規模に加えて、日本人の留学先別データをご覧ください。日本からの留学全体の長期的な変化は、日本人留学者数の推移で整理しています。
出典の利用と更新について
本記事の表は、公表された統計値から当サイトが独自に作成したもので、原資料の図版を転載したものではありません。出典の更新時には、最新年だけでなく過去年の改訂も確認します。
- HESA:出典表に表示されたCC BY 4.0に基づき、帰属と加工内容を明記
- Statistics Canada:Statistics Canada Open Licenceに基づき、資料名と公表日を明記
- IRCC:Open Government Licence – Canadaに基づき抜粋
- 豪州教育省:同省の著作権・CC BY 4.0案内に従い帰属と加工内容を明記
- OECD:データ利用条件に従い、資料・対象年・参照日を明記
- IIE、ENZ、フィリピン資料:原図や記事本文の転載は行わず、出典を付した統計事実と定義の整理に限定。資料全体の再利用条件は個別に確認が必要
掲載数値は2026年10月9日に確認した資料に基づきます。公表・更新の日付と、実際のデータの対象年は異なります。

