高校生の海外経験は、期間によって規模も行先も異なります。文部科学省の2023年度調査では、3か月未満の研修旅行が延べ31,711人、3か月以上の留学が延べ3,174人でした。2区分の合計34,885人のうち、研修旅行が90.9%を占めます。海外への修学旅行は別に集計されています。[HS-S01] 冊子2・3・5ページ
本記事では、日本人留学生全体の年次推移では捉えにくい、高校段階の期間区分、行先、学校の設置者、支援制度に絞って整理します。留学を検討する生徒・保護者、学校関係者が、数字の意味と確認すべき条件を把握するための業界リサーチです。
確認基準日:2026年10月7日。統計の対象:2023年度(令和5年度)。公表日:2025年3月28日。確認日時点の文部科学省公式掲載ページでは、令和5年度調査が最新です。制度情報は2026年10月時点の案内を別に確認しています。[HS-S01] [HS-S02]
最初に確認したい調査の対象と人数の数え方
調査対象は、全国の高等学校、中等教育学校の後期課程、特別支援学校の高等部、専修学校の高等課程と、各都道府県教育委員会・知事部局です。専修学校高等課程は2023年度調査から対象に加わりました。したがって、異なる年度の数値を比べるときには、調査対象の変更も考慮する必要があります。[HS-S01] 冊子1ページ
生徒数は、同じ生徒が複数の国・地域に留学や研修旅行をした場合、それぞれの国・地域で数える延べ数です。31,711人と3,174人を足した数字も、重複を取り除いた実人数ではありません。また、国内の対象校を通じた調査を、海外の高校へ直接進学した人を含む同年齢の日本人全体の留学経験率と読み替えることはできません。[HS-S01] 冊子1〜3ページ
3か月未満の研修旅行が約9割を占める
国・地域別の延べ人数。海外への修学旅行は含めない
研修旅行31,711人と留学3,174人の合計34,885人に占める研修旅行の構成比は90.9%。同一人物の重複を除いた人数ではありません。 出典:文部科学省 令和5年度調査
| 調査の区分 | 延べ人数 | 派遣した学校の実数 | 集計上の位置づけ |
|---|---|---|---|
| 研修旅行 3か月未満 | 31,711人 | 1,484校 | 語学研修や国際交流等を目的とする海外での学習・交流 |
| 留学 3か月以上 | 3,174人 | 809校 | 外国の高等学校等での留学 |
| 海外への修学旅行 | 66,618人 | 487校 | 研修旅行・留学とは別の調査項目 |
出典:文部科学省「令和5年度 高等学校等における国際交流等の状況について」冊子2・3・5ページ。人数は国・地域別の延べ数、学校数は各区分内の実数です。同じ学校が複数の区分に該当し得るため、学校数の合計は算出していません。[HS-S01]
この調査でいう「研修旅行」は、外国の高校や語学研修所等で学んだり、交流事業等に参加したりする旅行です。「留学」という言葉が短期の海外経験も含めて使われる場面があるため、資料を比較するときは期間区分まで確認すると、対象の違いが分かります。
研修旅行31,711人と留学3,174人の合計を分母にすると、3か月未満の構成比は90.9%です。高校生の海外経験を企画・支援する際には、短期研修の規模が大きい点が読み取れます。ただし、この2区分だけでは、1週間、1か月、半年、1年といった詳しい滞在期間の分布までは分かりません。
短期の最多はオーストラリア 長期の最多はカナダ
各期間区分の上位5か国・地域。両パネルは共通の構成比軸0〜35%で表示
研修旅行(3か月未満)
分母:31,711人(各区分の国・地域別延べ人数)。上位5か国・地域を表示
留学(3か月以上)
分母:3,174人(各区分の国・地域別延べ人数)。上位5か国・地域を表示
棒の長さは元人数から計算した構成比。人数と小数1位の割合を併記しています。多さは品質や安全性の順位ではありません。出典:文部科学省 令和5年度調査 冊子2・3ページ
| 順位 | 研修旅行 3か月未満 | 延べ人数 | 留学 3か月以上 | 延べ人数 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | オーストラリア | 7,774人 | カナダ | 998人 |
| 2 | アメリカ | 4,626人 | アメリカ | 653人 |
| 3 | 台湾 | 3,214人 | ニュージーランド | 551人 |
| 4 | イギリス | 2,826人 | オーストラリア | 349人 |
| 5 | カナダ | 2,604人 | イギリス | 85人 |
出典:同調査、冊子2・3ページ。各区分の上位5か国・地域を掲載。国・地域別の延べ人数です。[HS-S01]
3か月未満の研修旅行は47か国・地域に及び、オーストラリアが最多の7,774人です。台湾が3位に入っています。一方、3か月以上の留学は44か国・地域で、カナダが998人と最多、ニュージーランドが3位でした。
期間を混ぜた行先ランキングだけでは、この違いが見えにくくなります。行先を検討する際は、自分が考える期間に合った区分を参照できます。ただし、人数の多さは教育の質、安全性、本人との相性を示す指標ではありません。費用や学校の教育内容、受入条件は別に確認する必要があります。[HS-S04]
3か月以上の留学では私立が74.4%
各期間区分の延べ人数を100%とする。公立・私立・国立を区別
棒は丸め前の構成比で描画しています。表示割合の合計は丸めにより100.0%と一致しない場合があります。在籍生徒全体を分母とする留学参加率ではありません。 出典:文部科学省 令和5年度調査
| 設置者 | 研修旅行 3か月未満 | 留学 3か月以上 |
|---|---|---|
| 公立 | 13,274人(41.9%) | 776人(24.4%) |
| 私立 | 18,127人(57.2%) | 2,361人(74.4%) |
| 国立 | 310人(1.0%) | 37人(1.2%) |
出典:同調査、冊子2・3ページ。構成比は各区分の延べ人数から本記事で計算し、小数点第2位を四捨五入しています。[HS-S01]
3か月以上の留学は、私立の生徒が延べ2,361人で全体の74.4%を占めます。3か月未満の研修旅行における私立の構成比は57.2%です。派遣した学校の実数は、3か月以上では公立388校、私立410校、国立11校でした。
これは派遣された延べ人数の構成です。公立・私立それぞれの在籍生徒数を分母とする「留学参加率」ではありません。この差だけから、家庭の所得、学校の教育方針、留学への意欲を説明することもできません。学校別・家庭別の条件を検討するには、別の資料が必要です。
在籍校での単位認定と卒業時期を確認する
高校段階の留学では、帰国後の進級や卒業に関する確認が重要です。文部科学省の制度では、校長の判断により、外国の高校での履修を日本の高校での履修とみなし、最大36単位まで認定できます。トビタテの留学準備ガイドも、1年間の交換留学を含めて3年間で卒業したい場合は、日本の在籍校に確認するよう案内しています。[HS-S03] [HS-S04]
認定される単位数や、同じ学年の生徒と一緒に卒業できるかは、留学するだけで自動的に決まるものではありません。計画の初期段階で、在籍校に次の事項を確認しておくと、帰国後の学習計画を立てやすくなります。
- 留学・休学の扱いと、出発・帰国時期に関する校内の手続き
- 認定対象となる履修内容、必要な成績証明書や在籍証明書
- 進級・卒業の条件と、帰国後に必要な履修
- 日本の大学等への進学を考える場合の受験準備
また、海外の高校へ進学して卒業を目指すケース、日本の高校に在籍しながら1年間留学するケース、長期休暇を利用する短期研修では、必要な手続きや準備期間が異なります。「高校留学」の名称だけで同じ条件だと判断せず、留学の形を先に整理することが大切です。[HS-S04]
2023年度は47都道府県が支援や環境整備を実施
調査対象:47都道府県。1都道府県が複数項目に該当する
各項目は重複計上されるため、合計は算出しません。現在募集中の制度や全高校生への費用補助の有無を表す数値ではありません。 出典:文部科学省 令和5年度調査
| 取組内容 | 実施都道府県数 |
|---|---|
| 何らかの留学支援・留学環境整備 | 47 |
| 留学にかかる経費の支援 | 21 |
| 研修旅行にかかる経費の支援 | 25 |
| 留学情報を提供するフォーラム開催 | 24 |
| 海外勤務・留学経験者の学校への講師派遣 | 2 |
| 留学相談員の配置 | 3 |
| 外国人高校生の高校への受入れ | 25 |
| HP・ポスターなどの広報活動 | 24 |
| 海外の高等教育機関への進学支援 | 7 |
| その他 | 9 |
出典:同調査、冊子19・43ページ。複数の取組を行う都道府県があり、各項目は重複します。これは2023年度の実施状況で、現在募集中の制度数ではありません。[HS-S01]
何らかの支援・環境整備を行ったのは47都道府県です。そのうち、留学にかかる経費の支援は21、研修旅行にかかる経費の支援は25でした。情報提供や外国人高校生の受入れも含むため、「全都道府県が全ての高校生の留学費用を補助している」という意味にはなりません。
全国向けの制度では、トビタテ!留学JAPAN「新・日本代表プログラム」の高校生等対象があります。2026年10月1日に、2027年度・第12期の募集要項が公表されました。探究活動を含む留学計画を支援し、留学先での活動期間は14日以上1年以内が対象です。制度上の「高校生等」には高等専門学校の第3学年以下も含まれ、今回の文科省統計とは対象が完全には一致しません。[HS-S05] [HS-S06]
応募を希望する場合は在籍校へ相談し、募集要項の対象者、期間、家計基準、申請手続きを確認します。10月7日時点で応募システムの公開は12月上旬予定です。募集要項の公表と、申請受付の開始を分けて確認してください。地域の制度についても、現在の募集状況は自治体や学校の公式情報で確認する必要があります。[HS-S07]
数字から分かることと留学計画への使い方
高校生の海外研修・留学は、3か月未満の研修旅行が規模の中心です。3か月以上の留学では、行先や公私立の構成が変わります。高校段階の実態をつかむには、総人数に加えて、期間、学校との関係、単位認定、利用できる支援をそろえて見る必要があります。
留学を検討する際は、まず期間と目的を決め、在籍校の扱いを確認し、その条件に合う学校・プログラムと支援制度を調べます。本記事の数値は選択肢を整理するための参考資料であり、個別の留学先や事業者を推奨するランキングではありません。
調査と計算の注記
- 主な統計は2023年度の実績であり、2026年現在の渡航人数を表すものではありません
- 公表資料の「人」は、掲載箇所の注記に従い国・地域別の延べ数として扱いました
- 短期割合の計算は31,711÷(31,711+3,174)×100。海外への修学旅行は分母に含めていません
- 学校の設置者別割合の分母は各区分の派遣延べ人数。在籍生徒全体を分母とする参加率は算出していません
- 大学等を対象とする留学統計、民間事業者経由の調査、奨学金採用人数は対象が異なるため加算していません
- 留学支援の都道府県数は2023年度の値のみを掲載。現行制度の有無や採用条件は各制度の公式案内で確認してください
出典
- HS-S01 文部科学省 総合教育政策局国際教育課「令和5年度 高等学校等における国際交流等の状況について」(公表 2025-03-28、確認 2026-10-07)
- HS-S02 文部科学省「高校生の留学生交流・国際交流等に関する調査研究等」(公表日記載なし、確認 2026-10-07)
- HS-S03 文部科学省「学校教育法施行規則の一部を改正する省令について 高等学校等における外国留学時認定可能単位数の拡大」(公表日記載なし、確認 2026-10-07)
- HS-S04 文部科学省・日本学生支援機構 トビタテ!留学JAPAN「高校生の留学準備ガイド」(公表日記載なし、確認 2026-10-07)
- HS-S05 文部科学省・日本学生支援機構 トビタテ!留学JAPAN「2027年度 第12期 高校生等対象 募集要項」(公表 2026-10-01、確認 2026-10-07)
- HS-S06 文部科学省・日本学生支援機構 トビタテ!留学JAPAN「第2ステージを2028年度まで1年延長し高校生等対象第12期等の募集を開始」(公表 2026-10-01、確認 2026-10-07)
- HS-S07 文部科学省・日本学生支援機構 トビタテ!留学JAPAN「2027年度 第12期 応募への準備お役立ち情報」(公表 2026-10-01、確認 2026-10-07)
調査・編集:業界リサーチ
更新履歴
2026年10月7日:文部科学省の2023年度調査と確認日時点の制度案内を基に初稿を作成。グラフは元人数から生成し、人数・構成比・学校数の集計単位を区別しました。

